左右若老場

政治・思想・経済等への雑感を吐いていくこの上なく面倒で不要な場とその主

傲慢な人間というもの

地震で課長の家が倒壊した際、社員70名で力を合わせプレハブを建てた…が、その後 http://kosodatech.blog133.fc2.com/blog-entry-7403.html

 

このような2ちゃんねるの書き込み(をピックアップしたまとめブログ)を見かけた。

真実かどうかは当然わからないが、ここでは書き込まれた通りの事実があったとする。

各種災害に伴う混乱の中、日本は略奪が横行することもなく世界から驚かれたと東日本大震災の時にも話題になったが、確かにハリケーン・カトリーナで大々的に報道されたニューオリンズのようなあちらこちらで火事場泥棒が横行している場面は見たことがない。

しかし一方で、遺体から財布を抜き取っただの銀行の金庫がこじ開けられただの、婦女暴行に殺人にとそういった噂はよく耳にした。阪神淡路大震災の時も地下室から手榴弾などの噂はあった。

しかしこれらの証拠はカメラに写っていない。週刊誌のゴシップ記事にはあったかもしれないが、かといって私はこれらの噂が嘘で健全な日本人を貶める情報工作だといえるほど楽観的でもない。

事実、そういった犯罪はあったのだろう。メディアで報じられなかったのはより大規模で悲惨で絵になる町の残骸と暗い避難所、悲しむ被災者ばかりに注目していたからか。それとも自重したのか。日本マスコミより事実の報道に関しては海外マスコミの方が遠慮なく写すと思われるが、CNNなどで被災地の略奪現場などがあったような記憶はない。現地入りするのに時間がかかり、いざ取材を開始した頃には自治機能がある程度復活していて報道の目の前での犯罪行為は少なくともなかったと考えるのが自然か。

前置きが長くなってしまった。

この2ちゃんの書き込みが意味する所は、日本人以外がこうした非道を行うのであるということだが、そもそもの信憑性は後回しにする。

震災という非常時に限らず、また国籍に限らず隣の家の芝は青く見えるものだ。そこを理性的に考えられるかどうかが問題だが、残念ながら一定数はこの理性というものはない。ジコチューとかつて盛んに言われたこともあったが、自分さえ良ければそれでいいという段階ではなく、自分の倫理・価値観に社会は合わせるべきだという傲岸不遜な人間は珍しくない。身近な例では数回ばかり利用した店で常連顔になり「いつもの」で頼んで聞き返されると途端に不愉快な表情を浮かべるというアレだ。少し声に不満を含める程度ならまだ良いが、これが過ぎると感情を爆発させまるで毒でも飲まされたかのようにやれ土下座しろ店長を呼べとなるのである。

こうした人間はすべて日本人ではないとするのは不可能である。こうしたはた迷惑な人間が存在することを我々は認めなくてはならない。

ということからすれば、このようにいち早い復活を呪い、奪い、挙句に仇で返していくようなご近所さんがいても不幸ではあるが極度に稀な事例であるとは言えない。誰にでも起こりえる不幸な隣人だと考えるのが自然だ。

なぜこのように馬鹿げた非常識な真似をする隣人が(人間が)いるのか。簡単な心情を推察するに、まずこの課長宅が潰れたのならば同様に近所の家々も潰れているだろう。その中でプレハブとはいえ避難所ではない一個人の領域を得ているのは、この上なく幸運に見えるだろう。ましてや偶然残ったのではなく、多くの人の助力によって助けられた。砂漠で一人だけ水を与えられるのを見たようなものである。

ガンで入院して自分は保険に入っておらず隣の患者は保険に入っていた、そのことを妬むようなものだ。そこを不幸な時とはいえ忘れなかったり考えが及ぶのならば精々自分勝手な陰口で済むことだろう。

しかしそのような頭が足りない人は、己にふりかかった不幸も含めて八つ当たりを仕掛けてくる。悪いなどとは思わない、不幸な人間はなにをやっても許されるという自分勝手さを、一種の甘えをぶつけてくるのだ。

これに耐え切れず相手が妥協したらしめたものだ。不幸からの勝利者は戦果を勝ち取り(この場合、プレハブのテリトリーを)自尊心は満たされる。

この書き込みのケースの場合、複数人が加担し戦果を分かち合った。しかしそのような略奪者の集団なのだから、無限にあるわけではない戦果をどう配分するかで揉めるのは当然である。俺が私がと主導権争いをし、一旦は誰かに決まって納得してもすぐに何かの理由をつけて(日当たりが悪いなど)仕切り直そうとする。

そのような日々も復興が進めば終わる。良い環境が戻ってくれば宮殿に見えたプレハブもただの小屋に見えるだろう。略奪者達はその場を離れより良い環境へと移るが、その前に多少なりとも(少なくとも社会的に)体裁の悪いことをしていた事実は脳裏に浮かぶはずだ。そうなるとこの課長宅に謝罪や補償などをしなくてはならないと考えるのが自然だろうと思うが、残念ながら小説のように過ちを認め悔い改めるようなことは現実の略奪者に求めることは不可能だろう。

彼らは震災の混乱で気が動転していたという言い訳すら無く、ただ己が悪人とならない方向で考える。すると、この課長を悪に仕立てるのが最も簡単だ。話を都合よく解釈し、一人だけ悠々自適な生活を送り人々を顧みない、冷酷で非情な人間と罵るのだ。あとは簡単で、例えプレハブを略奪した事実を知られても、「散々文句を言われた」などあることないことで劣悪な環境を訴え、あくまでダメージの方が大きかったとしてしまう。よく考えなくてもこの話を現地で耳にするであろうのは同様のご近所さんなのだから、実態などバレバレだが、彼らにとって建前であろうと自尊心が守られればそれで良いのだし、真実を知る良き隣人もそんなめんどくさい悪き隣人に関わりたいとは思わない。かくして事は穏便に終わってしまう。

現在、福島の避難民と避難先の住民とで軋轢が生じていると聞く。他の東北沿岸被災地も同様に、書き込みにあったような立て直した家に石を投げつけられるというなことも聞く。十分に考えられるし、あり得ることだと思う。

福島の原発避難民とそうでない震災避難民との軋轢は想像に難くない。片方は東電からの賠償で生活が賄われているが、片方は原則自力で取り戻していくしか無い。日々パチンコに勤しむ避難民を見て腹立たしさを覚える地元住民、一方でそれしかやることがないのだとぼやく避難民。被災者を錦の御旗に何かがあれば差別だと傲慢を通す輩、放射脳に陥り安全を盾に差別を公然とする輩。

とかく必要なのは理性と理解であり、己の不幸で他人に甘えることではないのだ。

 

 

そういえばこの書き込み。支援隊結成して長き道程を超えてプレハブ建ててくれるとかどんだけ慕われていた課長なんだw 大体、震災三日後といえばさすがに避難所も活動しているし各種支援が行われ始めている頃合いで、重機と台船で個人に食料届けるような状況ではないと思うが・・・

近隣住民としちゃ、そこまでしてくれればさすがに多少の補助ぐらいは期待するだろうし、少しぐらい瓦礫の撤去をやってくれてもと重機を見れば思うのも無理はあるまい。それで批判を受けて耐えられなくなって車中泊とあるが、いやいや避難所行けよ。でなければそれだけしてくれる社員達なんだから知人宅に世話になるぐらいできるだろうに。それにそんな何人もやってきて仕切り屋ができるぐらい広いプレハブ建ててくれたのだろうか。