左右若老場

政治・思想・経済等への雑感を吐いていくこの上なく面倒で不要な場とその主

いまさら消費税

来年4月からの8%移行なので今更というほど遅くもない。むしろこれからが議論なり政権叩きなりに世間が騒がしくなるものであり、本番を迎えればその喧騒は絶叫の如くとなるのであろう。

消費税は御存知の通り現在5%の税率で所得に関係なく消費者は物品を購入すれば支払うこととなる。厳密には納税そのものは小売店など実際に商品販売をしている業者側が行うのだが。金持ちにも貧乏にも老いも若いも関係なく徴収できるので公平といえば公平な徴収システムだが、端的に考えて一億円中の500万と百万中の5万の違いは大きい。低所得者ならば絶対的な金額の負担は大きいと言える。当然、この問題点は既出だ。

かつて消費税の前に物品税というものが日本にはあった。贅沢税といえるものであり宝石や車など以外にレコードなどの嗜好品もこれの対象だった。消費税議論で欧米が食品には低税率にしているという話をよく聞くが、この物品税はそれとほぼ同じ仕組みであり欧米が真似したもの、らしい。最近の消費税議論では逆輸入でこの物品別の軽減を導入すべきだというが、日本で消費税に物品税がその座を譲ったのは、対象品目があまりに多くしかも新カテゴリの商品が出れば法改正まで対象物にできないといった問題、不公平感などが問題視された為だという。今の時代に欧州で培った物品別軽減税率のやり方を導入すれば随分マシになるのだろうが、果たして良い点を良いままに導入できるのか甚だ疑問である。表層的な部分だけ取り入れて終了となってしまう恐れは十分考えられる。

さて物品別の軽減税率の話をもう少し続ける。よくイギリスでは食料品は0%だなどと聞くが実際イギリス以外はどうなのかと色々見てみたが、意外と10%代の国は多い。基本的な消費税率が20%を超えるような国でそのケースが多いようだが確かに税率だけ見れば軽減されている。日本が目指す一律10%はむしろ低い部類に入るのだ。

さて消費税を上げるのは日本の抱える俗にいう借金の返済を主とする財政健全化のためだが、消費税は現在国税収入の20%前後を占めているようである。特別会計分まで含めれば40%近くとかなり大きい。税率が上がればそのまま倍加といかなくとも国税収入には少なくない割合で寄与することとなる。

この消費税上げで財政健全化は言うまでもなくIMF勧告が大きく影響している。国際機関が日本の消費税上げねえとマジやばいよこいつらと言ってるようなものであるから、国債の格付けへの影響は無いとはいえない。IMFに随分金を出している日本がこのようなことを言われるのは気分が悪いが。

だがしかし財政健全化はやるに越したことはない。消費税を上げることで果たしてどう転ぶかは政治家も経済学者も良い悪いのどちらの論者も多くいるからして、導入しなければ分からないというのが現実なのだろう。

政府は消費税上げに合わせて各種経済対策も行うとしており、それは当然考えられることだからやるべきだが、果たしてどこまで増税による冷えを押さえ込めるかには期待していない。

この消費税増税に合わせて当然、経団連といった経済界は法人税のさらなる減税や自動車関連の税を無くすよう求めている。企業としては消費税分の負担をそれで帳消し或いは軽減したいというのは見え見えで、まあ当然やるだろうなということだ。新聞などもっとわかりやすく、新聞は公共的だから見逃せの大合唱は笑えるぐらいにわかりやすい。日本の財政について新聞も随分問題視していたはずだが、自分達の売上は減らしたくないと必死である。つまり財政状態に文句はつけるが健全化には寄与したくない、ということだ。

私自身はさて消費税上昇に賛否どちらかと問われれば、そりゃ負担は少ないほうが良い。だが私はこの国の経済がそれで持つと考えるほど楽観的ではないので、諦観をもってそれを受け容れざるを得ないのだ。

さて財政が問題視されているがその財政を膨らませているのは社会福祉という風船だ。これを補うためには税収を増やすしか無い。だが当然この風船が膨らむのは北欧諸国のような充実したサービスという質向上のためではなく、受益者が増えていることにある。故に例え莫大な税金を課したとしても、それは向上のためではなく破裂を回避するための犠牲にしかならない。無益なことだが、将来破裂したら悲惨になるぞと脅されまくっているのだから従うしか無いのだ。

今、社会の中核を担う世代がこれの負担に直面し、さらに若い世代が継続する。私は年寄りになった時にそれなりの生活を送りたいので今の年寄りにやれ若者の生き血をすするだのと言いたくはないが、現実にはそうなっている。

これらを解決するためにはさてどうするべきか。

私は効率化を進めるしかないと考えている。年金を見てわかる通り、焼け石に水を続けていれば遠からずして国民は破綻する。制度は名前だけ生きて負担する世代は受け取る前に死んでいく、そして国は滅亡するという流れは回避しなければならない。

憲法改正も議論されているが、現代に合わせたスタイルに国家財政も刷新しなければなるまい。リヤカーで狭い範囲を物売りをしていた時代と、自宅を倉庫代わりに全国へ物を売る時代とは明らかに違うのだ。

企業も当然意識改革が必要だ。海外に負けて倒産して失業者が溢れるなどというのを脅し文句に、自らを――主に責任者たる役員がいる間を――帳簿の上だけでも成長企業にしようなどというのは愚かだ。かつてフォード社が労働時間を短縮し金融機関から非効率的だと非難されても給料を上げ、まず自社の社員は車を買えるようにとしたのは有名な話だ。その裏には大量生産に始まるコストカットがあるが、当然社員のモチベーションも寄与しているだろう。現在の社会はどうか? コストカットは=人件費カットや下請けへの値下げ強要であり、自社の製品を社員が買えるかなど気にもしていない。庶民の味方の値下げ宣言がその実庶民の収入を減らしてという看板だけの値下げとは皮肉なものだ。

そろそろまとめよう。消費税増税は私は所詮一時しのぎに過ぎないと考えている。多くの消費者には負担になるだろうし、企業はその分を法人税下げなどで補填できるが個人はそうはいかない。しばらくはまた所謂実感のない好景気となるだろう。

問題はその先だ。消費税増税は一時しのぎに過ぎないのだから、もっと抜本的な経済対策が必要だ。ここで企業がきちんと給料を上げるかどうかが焦点となる。なにかと株主還元第一で給与上げは役員と癒着した労組に阻まれパフォーマンスに終わるのであれば意味が無いし、そもそもそれを享受できる雇用がなければ仕方がない。国がいくら企業負担を軽減しようと、それを社員に還元しないのであればまさに今しか見てない愚者である。

とりあえず、駆け込み需要などという夢を見る輩は信じたくない。そんな一過性のものがあっても肝心の給料には結びつかないのである。景気が悪いのは誰の所為かお偉方は少しぐらい知ってくれないものだろうか。無理だな。